2020年度
2019年度
教員名
専門領域・卒論指導可能分野
文化人類学、先住民研究、オセアニア
演習題目
ゼミ紹介
私は文化人類学をディシプリンとしてオーストラリア先住民や彼らと日本人移民のミックスの人々の研究をしてきました。こちらのゼミの趣旨は、「周縁」に位置づけられてきたものー先住民族やオセアニアの事例ーをきっかけとして、その立ち位置から「周縁」から「世界」をみるということにあります。先住民族とオセアニア地域は双方ともに、文化人類学という分野の発展においてその思想の豊かな揺籃地となってきました。そこには、従来支配的であった近代西欧的思想やそれを基盤としたさまざまなシステムに彼らの存在が「回収」されにくいものであり、それに対して問いを突き付け続けてきたという側面があります。彼らに関する様々な研究を見ていくことで、今日の社会を相対化し批判的に見てゆく視点を養っていくことを目指します。 基本的にまじめに勉強するゼミです。 (1)先住民族(Indigenous Peoples)という言葉は現在、いわゆる入植国家(北米、オーストラリア、ニュージーランドなど)をこえて世界中で広く使われています。今日「先住民族」とされる人々は元々植民地化に続く近代国民国家の成立により強制的に「先住民族」とされたというルーツを持っています。このような状況は、旧植民地であり脱植民地化を遂げたのちの国民国家における少数者の間でも、共有されていることが指摘されるようになってきました。ここでは、先住民族と「国民国家」「伝統」「土地所有」「環境」などのコンセプトの関わりを探ることで近代西欧的価値観を問い、先住民族自身の人、環境、事故などとの関係の在り方を見ることで、今日の世界を批判的に見てゆく目を養うことを目指します。 (2)ここでの「オセアニア」は島嶼部を想定しています。(オーストラリア、NZ,ハワイの先住民などは(1)に該当します)。オセアニアは陸ではなく海に基づいた世界観を繰り広げてきたところです。オセアニア島嶼部では現在一見近代的国民国家が成立しているように見えます。しかし、それに基づく様々な社会システムは彼ら独自の在り方と様々な齟齬や絡まりあいをもたらしてきました。ここでは、それらを観察し、今日の世界について考えてゆくことを目指します。 3年次前期:先住民やオセアニアの事象そのものを扱った文献というよりも、文化人類学を中心に近代西欧的世界観を問う基本的な文献を読みます。想定している文献は『想像の共同体』『創られた伝統』『贈与論』『「エスニック」とは何か』などですが、ここでの目標は、今まで当たり前に思ってきた世界観の相対化とともに、文献の読み方を学ぶことです。古典と呼ばれるものを精読することは時間がかかり、想定していた文献は全て読めないかもしれませんが、それも必要なプロセスの一部です。 先住民族研究を志向する人は、専修専門「先住民族概論」と合わせての受講をお勧めします。オセアニア研究を志向する人は、山本真鳥『オセアニア史』を読んでおくことをお勧めします。
卒論・卒業研究について
3年後期:前期の最後に、文献の調べ方を教えますので、それにそって暫定でよいので各自卒論に向かってテーマを決め、読みたい文献を選定します。この時期には、関心が様々に変化することもありますが、幅広く色々と読んでいくことが重要です。卒論にむけてレジュメなどでの発表を始めていきますが、試行錯誤の結果、関心が先住民族やオセアニアから外れていってもOKです。 4年:4年次には3年後期に引き続き「卒論を書く」ということを目指します。夏休みまでに章立て及び全体のレジュメの第一回ができるようになっていることを目指します。 後期は11月をめどに卒論を「書いていく」ことに着手しますが、「書く」ことは、レジュメ発表とは別の思考の磨きをかけるプロセスです。最終的には卒論提出後、最後のゼミで発表、反省、手直しをして終わりになります。学生はレファレンスの仕方など、自分でも論文の書き方を色々と学ぶことが基本となります。 これまでの卒業論文には以下のようなものがあります。 『テーマパークにおける「オーセンティックな文化」とは?-ニュージーランド先住民マオリの観光村を事例に』『表象における自己/他者の権力関係は乗り越えられるのかーブラジル先住民ビデオ制作運動の分析を通して』『先住民主体の「持続可能な開発」と企業参画の可能性―ブラジル・マナウスにおける日系企業の活動を事例にー』『文脈化理論を通してみる先住民へのキリスト教宣教―17世紀ニューイングランドにおける宣教活動の事例からー』『北米先住民の「天性エコロジスト像」の真偽―The Ecological Indian: Myth and History(Krech 1999)の書評』『近代家族はコミュニズムか―贈与の論理で近代家族論を読み解く― 』
受講上の注意など
オセアニアや先住民(族)というトピックは、地域によっては日本語の研究が少ない分野なので、卒業論文を書く上では日本語以外に英語や当該地域の主要言語の論文や研究書を読む必要があります。
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