2024年度
教員名
専門領域・卒論指導可能分野
私の専門領域は,国際経済学,開発経済学,メキシコ経済論です。これまで国際経済の様々な領域(財・サービス貿易,直接投資,FTA,国際課税等)について研究してきました。とくに米国とメキシコとの間の国際分業がメキシコの経済発展に与えた影響について考えてきました。以上のような内容が私の研究上の「比較優位」ですが,演習題目に合わせて,私自身も皆さんと共に学び,自分の研究領域を広げていきたいと考えています。
演習題目
ゼミ紹介
「異端派経済学」とは耳慣れない言葉だと思います。まずは,標準的な経済学の初級教科書には紹介されていない理論に基づく経済学だと考えて下さい。その内容は実に多様であり,「異端の中の異端」であるマルクス経済学から,レギュラシオン理論,ラテンアメリカ構造学派などがあります(岡本哲史・小池洋一『経済学のパラレルワールド:異端派総合アプローチ』新評論,2019年,3頁)。このゼミでは,普段私達があまり触れる機会がない異端派の経済学を学び,その視点から現実の経済や社会の問題を考えてみたいと思います。 「なぜ主流派だけでなく,異端派の経済学も学ぶことが重要なのか」と感じる人は多いと思います。過去40年間,新自由主義やグローバル化など,世界の経済は主流派経済学の議論に導かれてきました。その間,途上国の経済成長により,絶対的貧困が減少し,先進国の経済水準に近づけた人々が増えた一方,先進国などで,中間層から転落し,貧困にあえぐ人々が増加しました。また温暖化等の地球環境問題も深刻化していると言われています。果たして,このまま主流派経済学の議論だけに基づいてこれからの経済や社会のあり方を考えてよいのか。近年,そのように感じる学生が海外で増えており,経済学教育のあり方に改革を求める運動が広まっています(例えば,Rethinking Economics やPost-crash Economicsなど。遠藤環「アジアの不確実な未来を共に生きる」『書斎の窓』No. 673, p.28参照)。異端派の経済学はこれまでの経済や経済学のあり方を見直す重要な議論を提供していると,私は考えています。 「異端派の経済学ってどんなものだろう? それを学ぶことによってどのような視野が開けてくるのだろう?」と感じた人は,一度,前掲書を手に取ってみて下さい。もしかすると,あなたの疑問に応えてくれる経済学を見つけることができるかもしれません。来年度まで時間がありますので,実際に使用する教科書は熟考したいと思いますが,現時点では,前掲書と共に,ブランコ・ミラノヴィッチ『資本主義だけが残った ――世界を制するシステムの未来――』(西川美樹訳)みすず書房,2021年,本田浩邦『長期停滞の資本主義 ――新しい福祉社会とベーシックインカム――』大月書店,2019年,斎藤修・古川純子編著『分水嶺にたつ市場と社会 ――人間・市場・国家が織りなす社会の変容――』文眞堂,2020年,斎藤幸平『人新世の「資本論」』集英社新書,2020年,中本悟・松村博行『米中経済摩擦の政治経済学 ――大国間の対立と国際秩序――』晃洋書房,2022年,河野龍太郎『成長の臨界 ――「飽和資本主義」はどこへ向かうのか――』慶應義塾大学出版会,2022年,西川潤・野田真理編『仏教・開発・NGO ――タイ開発僧に学ぶ共生の智慧――』新評論,2001年,ピーター・テミン『なぜ中間層は没落したのか ――アメリカ二重経済のジレンマ――』(栗林寛幸訳)慶應義塾大学出版会,2020年等が念頭にあります。これらの本やその筆者らの研究に触れて興味をもてるかどうかが,このゼミ向いているかどうかの「リトマス試験紙」になると思います。
卒論・卒業研究について
3年生の秋学期の前半は,卒論に向けて論文の書き方や社会科学の研究手法について学びます。そのために,『政策リサーチ入門』や『論文のレトリック』などのテキストを読み,それらに書かれている内容を基にした課題に取り組んでもらいます。 秋学期の後半には,卒論を念頭にゼミで自分の研究テーマに関する報告をしてもらいます。 ちなみに過去3年間の卒論のタイトルは以下の通りです。 2023年度 「多国籍企業のアグレッシブ・タックス・プランニング対策としてのBEPSプロジェクトの効果検証 ――デジタル・エコノミー対策を中心に――」 「スロヴェニア経済の成長要因としての高い技術的潜在力:GDP、特許出願件数、研究・開発費、および研究・開発従事者数の指標を用いた分析」 「韓国におけるベーシック・インカム導入の効果の検討 ――雇用問題・所得格差改善の可能性――」 2022年度 「なぜ日本の子どもの貧困対策は不十分なのか ――子どもの貧困の再認識――」 「途上国における輸出指向型農業に関する一考察 ――マレーシアおよびインドネシアのパーム油産業を事例に――」 「輸出による技術伝播の実証分析」 「環境問題に対する脱成長論」 2021年度 「日本経済が直面する問題とその解決策を探る ――長期停滞の視点から――」 「日本の水道事業は今後どのように管理・運営されていくべきか」 「ラオスにおける新興農業関連工業化(NAIC型工業化)の課題点の検討」 「日本経済停滞の一要因である中小企業IT化の遅れ」 「日本におけるコンテンツツーリズムによる自治体の活性化」 「日本がMaaSを導入するための課題解決に関する考察」 「ベーシックインカム政策は日本の長期停滞の打開策となりえるか ――社会保障制度の再編という観点から――」 「海外直接投資によるスピルオーバーを効果的に享受するための投資受入国の能力の検討」 「日本の社会問題への行動経済学の利用可能性について」 「ドイツの移民統合に果たす労働組合の役割」
受講上の注意など
入ゼミに当たっては,レポートと面接を課します。詳細は個別のゼミガイダンスで伝えます。研究計画や志望動機等と共に,導入(ミクロ経済学入門とマクロ経済学入門)と概論(貿易と直接投資)の経済学の授業をこれまで可能な限り受講してきたことを重視します。入ゼミの条件として,第1に,2年生の春学期までにそれらの授業を1つは履修済みまたは履修中であることです。第2に,本演習担当教員の授業を中心に,経済学と演習題目に関連する授業を可能な限り受講する意志のあることです。第3に,春学期から演習に参加できる人です(秋学期からの参加はできません)。第3年次編入者で入ゼミを希望する人に対しても,以上と同様の条件を課します。入ゼミの条件に関して何か具体的に質問したいことがあれば,メールで連絡して下さい。
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