2023年度
教員名
専門領域・卒論指導可能分野
専門領域:政治学(原論・政治理論)、倫理学、いのち論
演習題目
ゼミ紹介
ゼミの担当者の関心事は、外国語学部時代から、「悪・暴力・不正義を/から考える」と「いのちをめぐる政治」という二本柱でした。最近では、ひっくるめて、「いのち」論ゼミ、と呼んでいます。 国際社会学部になってから、春学期には、共通テキストとして、ザ・古典をとりあげるようにしてきました。ひとりだけで読むのがしんどいものをゼミのなかまと力をあわせて読み、巨人の肩に乗って遥かかなたを望み見る練習もしてみる。そんな大それた野望を抱いてのこと。ハイデガー『存在と時間』、アリストテレス『ニコマコス倫理学』、マルクス『資本論 第一巻』、ミヒャエル・エンデ『モモ』、ユクスキュル『生物から見た世界』、など、を扱いました。 昨2022年度は、趣をすこしばかり変えて、「いのち論からの再出発――生・愛・労働/仕事」というテーマで、森崎和江『まっくら』、石牟礼道子『椿の海の記』、藤本和子『ブルースだってただの唄:黒人女性の仕事と生活』、柏木博『家事の政治学』を読みました。どの作品も、このゼミでの古典ともいうべき書物だと確認しました。 2023年度は、テーマを「いのち論を劈く」として、ケアの倫理と〈いのちを産む〉にまつわる仕事に触れることを提案します。キャロル・ギリガン『もうひとつの声で』、森崎和江『いのちを産む』、宮地尚子『ははがうまれる』。 ゼミ生それぞれがごじぶんにとっての「古典」「わたしの一冊」に出会い、その書を繰りかえし読み、そしてかんがえた事柄をゼミの仲間につたえ、仲間からの厳しくも暖かい応答をうけとめ、また考えなおし、歩み、……ということをつづけ、それぞれの「いのち」論をかたどることばを創造=奪還してほしい、というのが、ゼミの音頭取りの小さな願いです。「生き方にたえずあらたな霊感を与えつづけるような具体的な生成力をもった骨髄としての思想、生きられたイメージをとおして論理を展開する思想」(真木悠介『気流の鳴る音』)をわがものとされるように。
卒論・卒業研究について
問いをもって生き、その問いを考え抜く練習、地道に独り歩くこと――しかし仲間とともに――の積み重ねがあってこそ、卒業研究という大学生活の集大成ができあがってゆきます。その書き物は、学窓をあとにされてからも、おそらくは何かあったときに手に取り、己が来し方を振り返り、たとえ闇にあっても足元を照らす一灯として「わたしの一冊」ともなるのでしょう。 22年度には、以下の卒業研究・卒業論文が書かれました。 ・誉め言葉に潜む悪意のない差別―-日本におけるジェンダー及び人種に関するマイクロアグレッション― ・パレスチナ問題が内包する可能性―岡真理の「分有」論を手がかりに― ・現代社会における生の苦しみについて―ショーペンハウアーの「意志」の視点から― ・相容れぬノスタルジア・アイデンティティ・スティグマ ・書評:中西嘉宏著『ロヒンギャ危機―「民族浄化」の真相』(中央公論新社〈中公新書〉、2021年) ・丸山政治学における戦後日本の「非政治化」についての分析 ・甘くて、やわらかい
受講上の注意など
演習担当者がおこなう授業、政治社会論入門、政治理論を履修済みであるか、演習履修時と同時並行で履修することをつよくもとめてきました。 ごじしんが関心のある学問の歴史そのものにふれてみること、あるいは、もっと手前で、だれかひとりの書き手の仕事に耽溺してみること、現代世界論コースで開講されている授業にかんしてどれかひとつの授業でも「勉強バカ」になりきってみることは、ごじぶんで政治や社会や生そのものを見通すうえで、きっと支えになるはずです。 履修を希望するさいには、選抜の有無にかかわらず、以下の課題に応える文章を提出してください。 「あなたじしんが構想する〈いのち〉論では、どのような課題群、テーマ群、問題群(複数形であることに注意!)が立てられるか。それぞれの課題、テーマ、問題について、あなたが読むべきと考えるテキスト(書籍や論文あるいは小説、詩、映画など)を少なくとも一つはあげて説明してください。字数は2000 字以上とします。」
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