2023年度
教員名
専門領域・卒論指導可能分野
社会学、質的社会調査法、沖縄現代史・社会運動史
演習題目
ゼミ紹介
アメリカの社会学者C・ライト・ミルズ(1916-1962)は、1959年の著書『社会学的想像力』で「一人の人間の生活と、一つの社会の歴史とは、両者をともに理解することなしにはそのどちらの一つも理解することができない」と説き、「「社会学的想像力を所有している者は巨大な歴史的状況が、多様な諸個人の内面的生活や外面的生涯にとって、どんな意味を持っているかを理解することができる」と主張した。ミルズの考えにならえば、社会学を学ぶ意義とはすなわち、個々人の日常が「社会」や「歴史」とどう関連しているかを捉える「社会学的想像力」を鍛えることであり、構造的変動のなかで翻弄されながらも、変革を求め抗い生きる個々人の日常の具体的経験がつくる歴史を捉えていくことである。 このゼミでは、人びとの日常と、人びとの置かれた構造的変動の連関、いいかえれば個々人の具体的経験〈ライフヒストリー〉と〈歴史〉の接点を捉え、記述することを目指す。 自らにとって切実な問題が何であるかを理解し、その上で、文献・論文などの先行研究を積極的に探し、読み進め、問いを立てる努力を継続して行うことが本ゼミの参加にあたっては必要とされる。 2023年度のゼミでは、特に第2次世界大戦後の沖縄における囲い込み/エンクロージャーとそれに対する抵抗について書かれたテキストを読み理解を深める。とりわけ、女性をはじめとする周縁化された人たちの経験について学ぶ。使用予定の文献・論文は以下の通り。 ・日韓共同「日本軍慰安所」宮古島調査団著 ; 洪玧伸編『戦場の宮古島と「慰安所」 : 12のことばが刻む「女たちへ」』なんよう文庫、2009年。 ・金富子, 小野沢あかね編『性暴力被害を聴く : 「慰安婦」から現代の性搾取へ』岩波書店、2020年。 ・沖縄県教育庁文化財課史料編集班編『沖縄県史 各論編8 女性史』沖縄県教育委員会、2016年。 ・姫岡とし子 [ほか編著]『労働のジェンダー化 : ゆらぐ労働とアイデンティティ』平凡社、2005年。 ・玉城福子『沖縄とセクシュアリティの社会学 : ポストコロニアル・フェミニズムから問い直す沖縄戦・米軍基地・観光』人文書院、2022年。 ・宮城晴美『母の遺したもの : 沖縄・座間味島「集団自決」の新しい事実』高文研、2008年。
卒論・卒業研究について
このゼミでは、3,4年次の次の作業を通じて卒業論文を完成させる。 3年次(前期)文献購読とディスカッション、個々の学生によるプレゼンテーション (後期)文献購読とディスカッション、個々の学生によるプレゼンテーション ※前期は学期末までに4000字以上のレポートを執筆し提出することが要件となる。 ※後期は学期末までに8000〜10000字以上のゼミ論文を執筆し提出することが要件となる。 4年次:卒論執筆の途中経過報告および討論をくり返し、後期の仮提出時までに16000字以上の卒業論文を完成させる。 (参考)2022年度に提出された卒業論文題目は下記の通り。 「政治を歌うことに関する考察 うたごえ運動・放送禁止歌・ポピュラー音楽分析から」 「フィリピン旧日系人4世の日本定住という『賭け』―日本に住む4世Aさんの定住を支える家族と世代格上げ戦略に着目して―」 「観光地における住民意識―持続可能な沖縄観光に向けて―」 「ろう者に対する眼差しをいかにして変えうるかに関する一考察―社会公正教育を手がかりとして」 「ワーク・ライフ・バランスの実現のために―「女性の社会進出」と「男性の家庭進出」―」 「イングランドフットボールにおけるファンサポーターとその発展可能性―全ての人が安全にスタスタジアム観戦を楽しむためには―」 「日本の現代社会における芸人のあり方に関する考察」 「メディアが形成した舞妓イメージ:観光客による舞妓パパラッチの原因の考察」 「コロナ禍の「世間」で生じた差別・偏見―規範意識と穢れ意識の観点から―」 「“外国人労働者に内在するコンフリクトの解決”という新たな視点からの日本語教育の考察」 「沖縄県那覇市における「子どもの居場所」支援の実態─本当に必要な「居場所」を届けるために─」
受講上の注意など
①この演習では沖縄現代史、社会運動についてのテキストや資料を扱います。関連するテーマについて、本や論文を読み、論文を書きたいという学生を歓迎します。 ②前期に開講する「社会学原論」、後期に開講される「質的社会調査法」と「現代社会論」を2年次のうちに、または3年次までに履修することが前提条件です。 ③自身が関心のあるトピックやテーマ、領域などをあらかじめ考え、関連する文献などがあれば読み進めておくこと。 ④ゼミ登録時には、何をテーマにしたいのか、なぜこのゼミを選ぶのかについての志望動機、および留学予定等を含む事項について詳細に書くこと。 ⑤課題テキストは事前に読み、論点と質問を用意した上でゼミに参加すること。
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