2024年度
教員名
専門領域・卒論指導可能分野
文化人類学、先住民研究(オーストラリア、ニュージーランド、北米中心。その他の地域も可)、オセアニア地域研究
演習題目
ゼミ紹介
私は文化人類学の分野よりオーストラリア先住民や彼らと日本人移民のミックスの人々の研究をしてきました。このゼミの趣旨は、「周縁」に位置づけられてきたものー先住民族やオセアニアーの事例をきっかけとして、「世界」をみるということです。従来支配的であった近代的なシステムに対して彼らの存在は問いを突き付け続けてきました。そこ関わる研究を見ていくことで、今日の社会を相対化する視点を養うことを目指します。 同時に、自らが疑問を持ったことを調べ形にするプロセスは、大学を離れても一生使えるツールです。ここでは、学生の方たちが自分の興味に合わせて勉強するのを手助けするのが基本姿勢です。基本的にまじめに勉強するゼミです。 (1)先住民族(Indigenous Peoples)という言葉は現在、いわゆる入植国家(北米、オーストラリア、ニュージーランドなど)をこえて世界中で広く使われています。「先住民族」というのは、植民地化の成立のプロセスにおいて作り出された存在ですが、彼らのマイノリティとしての状況は、脱植民地化を遂げた国民国家の少数者にも共有されていると指摘されるようになってきました。重要なことは、「先住民族」の形成なくして近代的国民国家やそれを前提とする現代の世界システムは存在しなかったということです。このゼミでは、先住民族と「国民国家」「伝統」「環境」などのコンセプトの関わりを探ることで近代的価値観を問い、先住民族自身の人、環境、自己などとの関わり方を見ることで、今日の世界がそうでなくてはならなかったのか、を問えるようになることを目指します。 (2)ここでの「オセアニア」は島嶼部を想定しています。(オーストラリア、NZ,ハワイなどは(1)に該当します)。オセアニアは海に基づいた世界観を繰り広げてきたところです。オセアニア島嶼部では現在一見近代的国民国家が成立しているように見えます。しかし、近代的なシステムは彼ら独自の在り方と様々な絡まりあいをもたらしてきました。「オセアニア」を興味の入り口とする場合は、それらを観察し、今日の世界の在り方を考えていきます。 こちらのゼミのやり方は①共通の文献購読②卒論に向けての個別指導、の二本立てです。 ①:3年次を通じて、文化人類学を中心に『想像の共同体』『辺境から眺める』など近代的価値観を問う基本的な文献を読みます。世界観の相対化とともに、文献の読み方を学ぶことが目標です。古典の精読は時間がかかりますが、それも必要なプロセスの一部です。後期には、②のプロセスを通じて学生に文献をピックアップしてもらいます。 この授業を取るにあたって、専修専門授業「『先住民(族)』から見る」「『先住民(族)』から考える」と合わせての受講、世界教養科目「文化人類学基礎Ⅰ・Ⅱ」の受講、オセアニア研究を志向する人は合わせて山本真鳥『オセアニア史』を読んでおくことをお勧めします。 ②:3年の前期より、個別の面談を通じて学生の興味に合わせての文献の探し方や研究の方向付け、などを指導します。最初の関心はおぼろげでも、関連する文献を捜して読んでいくことで、興味は絞れてきます。3年次の終わりには卒論のテーマが決まっていることを目標とします。
卒論・卒業研究について
「ゼミ紹介」で言及した②の個別指導を通じて、3年生の時点で自分たちの興味に従い文献を探し、読んでいってもらいます。3年生の時期には、関心が様々に変化することもありますが、それは自然のプロセスであり、それに従い幅広く色々と読んでいくことが重要です。それに合わせて、先住民族やオセアニアから外れていってもOKです。 4年生の時期には、3年生の終わりに決定したテーマに沿って「卒論を書く」ということを目指します。夏休みまでに章立て及び全体のレジュメの第一回ができるようになっていることが目安です。 後期は11月をめどに卒論を「書いていく」ことに着手しますが、「書く」ことは、レジュメ発表とは別の思考の磨きをかけるプロセスです。最終的には卒論提出後、最後のゼミで発表、反省、手直しをして終わりになります。学生はレファレンスの仕方など、自分でも論文の書き方を色々と学ぶことが基本となります。 卒論制作は最初に想定したものからかなり異なってくる、というのが常套です。学生の人たちには、最後の目標の日程に合わせて計画を自分で制作までの計画を立て、その都度修正してゆくことを学んでもらうことになります。 これまでの卒業論文には以下のようなものがあります。 『テーマパークにおける「オーセンティックな文化」とは?-ニュージーランド先住民マオリの観光村を事例に』『表象における自己/他者の権力関係は乗り越えられるのかーブラジル先住民ビデオ制作運動の分析を通して』『先住民主体の「持続可能な開発」と企業参画の可能性―ブラジル・マナウスにおける日系企業の活動を事例にー』『文脈化理論を通してみる先住民へのキリスト教宣教―17世紀ニューイングランドにおける宣教活動の事例からー』『北米先住民の「天性エコロジスト像」の真偽―The Ecological Indian: Myth and History(Krech 1999)の書評』『近代家族はコミュニズムか―贈与の論理で近代家族論を読み解く― 』『「マオリかどうかは自分で決める」: 民族と他者表象、先住民の視点から』『人々が「行き当たりばったり旅」をする理由とは』
受講上の注意など
オセアニアや先住民(族)というトピックは、地域によっては日本語の研究が少ない分野なので、卒業論文を書く上では日本語以外に英語や当該地域の主要言語の論文や研究書を読む必要があることもあります。 このゼミの趣旨の一つは「学生が自分の興味に従って勉強してゆくのを助ける」ことであり、学生の興味とやる気が原動力です。最初の興味はおぼろげなものであってもよいですが、学生には、自分で文献を探して試行錯誤しながら勉強してゆくこと、自分で計画を立てて考えてゆくことなどまじめに勉学にコミットすることを期待します。
ページの先頭へ