2025年度
教員名
専門領域・卒論指導可能分野
レイシズム現象に関する社会学、社会思想、権力論、批判理論、ポストコロニアリズムなど
演習題目
ゼミ紹介
レイシズム研究のゼミです。しかしこのゼミでは狭い意味でのレイシズム(人種差別)を扱うのではありません。 ゼミで扱うレイシズムとは(わかりやすく言えば)「死んでいい人間」をつくりだす近代的な権力関係ということができます。そのような広い意味でのレイシズムが関連するのは、戦争やジェノサイドから気候変動にまつわる様々な抑圧、さらには障害者差別や移民排斥やフェミニズムへの攻撃、セクシュアルマイノリティへの差別まで、非常に多岐にわたる社会問題と絡み合っています。 このゼミではこのようなレイシズムの権力関係を批判するという切り口から、現代世界で実際に起きている様々な社会問題を批判的に考察するための知を身につけることを目的としています。 そのための知的訓練として、このゼミでは権力批判の古典を精読していきます(ここでの古典とは、いつ書かれたかに関わらず、ある普遍的な問題について考え抜いた思考を示しているがゆえに、常に現在性を持っているようなテキストのこと)。古典は時間をかけてじっくりと読み通すことで、入門書や概説書では決して得ることができない、批判的思考力を鍛える訓練ができます。 ゼミ生は各回文献指定範囲を事前に精読したうえで、各自が論点や疑問点を用意して参加することが求められます(「わからないところがあるが、何がわからないのかはわかるので、言語化してゼミで質問ができる」状態まで思考してくることが求められます)。 過去に読んだ古典の例:カール・マルクス『資本論』部分、ミシェル・フーコー『監獄の誕生』、『知への意志』、『社会は防衛しなければならない』、『生政治の誕生』、ベル・フックス『フェミニズムはみんなのもの』、シルヴィア・フェデリーチ『キャリバンと魔女』、村田沙耶香『コンビニ人間』 2025年度春学期の予定:イマニュエル・ウォーラーステイン『史的システムとしての資本主義』、ウォーラーステイン&エティエンヌ・バリバール『人種・国民・階級』を読む予定。 ※ゼミ選抜とゼミ課題があります。下記「受講上の注意」を参照。 ※課題文献には英語文献が含まれることもあるので一定の語学力が必要となるでしょう。 ※事前連絡いただければ見学可。サブゼミ(通常授業履修)希望もメール下さい。
卒論・卒業研究について
現在ゼミは3年生と4年生のゼミを合同で行っています。 3年次:春学期と秋学期に、古典の精読、学生による発表。春学期と秋学期にそれぞれの学期末までに5000字以上と、12000字以上のレポート(卒論草稿を兼ねてよい)を提出すること。(字数規定は単位認定基準ではなく、みなさんが卒論を書くうえでの「保険」を兼ねたものだとお考えください。つまり3年生のうちに長い文章を書いておけば、4年次の卒論執筆時になにかの壁にぶつかったときにもそれを加筆修正することで活かすことができます。) 4年次:卒業論文を完成させる(各自のペースで必要に応じて卒論執筆の経過報告を行う)。 研究テーマ:上欄に書いた権力関係への批判的視点がある限り、ご自身が取り組みたいことであれば何でも構いません(狭い意味でのレイシズムに関心を限定する必要はないということ)。 (※私の専門からおそらく特に有益なアドバイスができるのは、テーマに関してはボーダー(つまり国境、国籍、パスポート、入管など)に関する問題、在日コリアンに対する差別問題、ポストコロニアリズム、切り口については資本主義や新自由主義と差別の関係に関する問題など) 過去の卒業論文のタイトル例:「プロテストとしてのジャズ」 【教育・研究指導の方向性】なるべく主体(アイデンティティや差別被害・疎外など)からではなく、主体の次元を条件づけているであろう権力関係の次元(人々の関わり合いが織りなす現実の力関係)から分析していくアプローチを採用しています(梁『レイシズムとは何か』(ちくま新書)参照)。このことは研究する側の(とくにマイノリティの)心身(メンタルヘルス)を守るうえでも重要な方針としています。 ※卒業研究の場合はご相談ください。
受講上の注意など
※長くなりますが、ゼミ希望者はスクロールで最後までお読みください。またゼミを考えている方で、反差別ポリシーについて気になっている方は、必要があれば面談(オンライン可)でどんなことでもご説明しますので遠慮なくご連絡ください。 一、梁英聖の導入科目を受講・聴講済みか教科書の内容を習得済みのこと。またゼミの内容と強い関連がある場合には同時に開講される概論科目、専門科目を3年次に平行して受講・聴講することを推奨する(受講済みでも可)。 一、研究される側を守るためマイノリティ当事者への(対人)質的・量的調査は原則不可(当事者への負担を考慮してのこと。どうしてもという方は要相談)。 一、研究室には差別資料が開架されており、ゼミでも差別実態を引用・紹介する可能性があります(ただし特に酷い差別資料を扱うことはこれまでのところ稀ですし、課題文献にするとしても読むのは各自の任意にするなどの措置は取りますからご安心ください)。 一、ゼミでは参加者による差別やアウティングは禁止されます(差別禁止の判断基準は人種差別撤廃条約をはじめとする国際人権諸条約)。ゼミへの初参加者は反差別研修参加必須(毎年春開催)。 【選抜のためのゼミ課題と(必要な場合の)個別面談】 ゼミ希望者は必ず下記要領で「梁ゼミ課題(お名前)」と題した文章ファイルを作成し(800字以上)メール送付のこと。 内容:A)ゼミ志望動機とゼミで学びたいこと(研究テーマ(未定可))を書いてください(※もしも差別や社会問題を批判する専門書か専門性を有する者が書いた本(アクティビストやマイノリティの当事者の本を含め)を読んだことがあればそれも書いてください)、B)留学予定有無と時期。 期限:学務情報システムの「第n次ゼミ希望届回答」最終日と同じ(例年第1次は6月初、2次は下旬だが毎年異なるので各自要確認のこと。なおこのゼミ課題とは「別に」、学務情報システムでの「ゼミ希望」提出も必要なので忘れずに!) ※差別研究はセンシティブなもので、学生を含めた研究者のメンタルヘルスにとってリスク要因となりえます。それゆえ学生の意向と梁ゼミでの教育・研究の方向性がかなり異なると思われる場合や、マイノリティに関連する研究などで学生本人のメンタルに過度の負担がかかりそうだと思われる場合などについては、ゼミ決定の前に教員からメールで個別面談を提案する場合があります。その場合には必ず応じて下さい(予想される懸念事項などをお伝えし、本当にこのゼミで良いのか、意志の確認を致します)。
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