2026年度
教員名
専門領域・卒論指導可能分野
レイシズム研究。レイシズム現象に関する社会思想、権力論、批判理論、社会学、ポストコロニアリズムなど
演習題目
ゼミ紹介
レイシズム研究のゼミです。しかしこのゼミでは狭い意味でのレイシズム(人種差別)を扱うのではありません。 ゼミで扱うレイシズムとは(わかりやすく言えば)「死んでいい人間」をつくりだす近代的な権力関係ということができます。そのような広い意味でのレイシズムが関連するのは、戦争やジェノサイドから気候変動にまつわる様々な抑圧、さらには障害者差別や移民排斥やフェミニズムへの攻撃、セクシュアルマイノリティへの差別まで、非常に多岐にわたる社会問題と絡み合っています。 このゼミではこのようなレイシズムの権力関係を批判するという切り口から、現代世界で実際に起きている様々な社会問題を批判的に考察するための知を身につけることを目的としています。 そのための知的訓練として、このゼミでは権力批判の古典を精読していきます(ここでの古典とは、いつ書かれたかに関わらず、ある普遍的な問題について考え抜いた思考を示しているがゆえに、常に現在性を持っているようなテキストのこと)。古典は時間をかけてじっくりと読み通すことで、入門書や概説書では決して得ることができない、批判的思考力を鍛える訓練ができます。 ゼミ生は各回文献指定範囲を事前に精読したうえで、各自が論点や疑問点を用意して参加することが求められます(「わからないところがあるが、何がわからないのかはわかるので、言語化してゼミで質問ができる」状態まで思考してくることが求められます)。※ゼミ希望者は全ての欄をスクロールで必ず最後までよくお読みください。 過去に読んだ古典の例:カール・マルクス『資本論』部分、ミシェル・フーコー『監獄の誕生』、『知への意志』、『社会は防衛しなければならない』、『生政治の誕生』、ベル・フックス『フェミニズムはみんなのもの』、シルヴィア・フェデリーチ『キャリバンと魔女』、村田沙耶香『コンビニ人間』、イマニュエル・ウォーラーステイン『史的システムとしての資本主義』、ウォーラーステイン&エティエンヌ・バリバール『人種・国民・階級』、ナオミ・クライン『ショック・ドクトリン』『これがすべてを変える』など。※課題文献には英語文献が含まれることもあるので一定の語学力が必要。また事前連絡いただければ見学可。サブゼミ(通常授業履修)希望もメール下さい。 【選抜のためのゼミ課題と個別面談があります(詳細説明会)】 ゼミ課題:次の(1)(2)の内容を含む800字以上の文章をワードファイルにてメール提出のこと。(1)ゼミ志望動機とゼミで学びたいこと(研究テーマ(未定可))(※差別や社会問題を批判する専門書(アクティビストやマイノリティ当事者本含め)を読んだことがあればそれも含めて書くこと)、(2)留学予定有無と時期。 ゼミ課題の期限:学務情報システムの「第n次ゼミ希望届回答」最終日と同じ(例年第1次は6月初、2次は下旬だが各自要確認。なおこれとは「別に」、学務情報システムでの「ゼミ希望」提出も必要なので忘れずに!) 個別面談:提出されたゼミ課題をもとに、個別面談を行います。
卒論・卒業研究について
3年次:春学期と秋学期に、古典の精読、学生による発表。春学期と秋学期にそれぞれの学期末までに5000字以上と、12000字以上のレポート(卒論草稿を兼ねてよい)を提出すること。(字数規定は単位認定基準ではなく、みなさんが卒論を書くうえでの「保険」を兼ねたものだとお考えください。つまり3年生のうちに長い文章を書いておけば、4年次の卒論執筆時になにかの壁にぶつかったときにもそれを加筆修正することで活かすことができます。) 4年次:卒業論文を完成させる(各自のペースで必要に応じて卒論執筆の経過報告を行う)。 ※人数次第では3年次と4年次のゼミを合同で行う場合がある。 研究テーマ:上欄に書いた権力関係への批判的視点がある限り、ご自身が取り組みたいことであれば何でも構いません(狭い意味でのレイシズムに関心を限定する必要はないということ)。 (※私の専門からおそらく特に有益なアドバイスができるのは、テーマに関してはボーダー(つまり国境、国籍、パスポート、入管など)に関する問題、在日コリアンに対する差別問題、ポストコロニアリズム、切り口については資本主義や新自由主義と差別の関係に関する問題など) 【指導方針】なるべく主体(アイデンティティや差別被害・疎外など)からではなく、主体の次元を条件づけているであろう権力関係の次元(人々の関わり合いが織りなす現実の力関係)から分析していくアプローチを採用しています(主体を考察する場合でもどのような社会関係がその主体を成立させているかという問いから考察するということ。梁『レイシズムとは何か』(ちくま新書)の特に2,7章参照)。このことは研究する側の(とくにマイノリティの)心身(メンタルヘルス)を守るうえでも重要な方針としています。しかし後述のように、これは万能ではありません(気になる方はゼミ希望前にご連絡ください)。 ※卒業研究の場合はご相談ください。
受講上の注意など
一、梁英聖の導入科目か教科書を既習のこと。3年次に同時開講される概論、専門科目を既習するか平行して参加すること。 一、対人質的・量的調査原則不可(特にマイノリティへの負担を考慮して。どうしてもという方は要相談)。 一、本ゼミは上述の指導方針による研究共同体です。したがってマイノリティのエンパワーメント空間であることを直接の目的とはしていません(後述の通りせいぜい「限定的セイファースペース」でしかない)。故にマイノリティ学生はできるなら必要に応じて、ゼミとは別にエンパワーメントのためのコミュニティや相談・雑談先につながることを強く推奨します。((1)主体の次元ではなく一般的な振る舞い方や思考形態の次元に焦点化した研究共同体と、(2)様々なマイノリティの主体(アイデンティティや被害・疎外)に即したエンパワーメントを目指した研究共同体があるとすれば、本ゼミは(1)です。にもかかわらず本ゼミは(2)にとっても重要となる支えを(結果的に)提供する可能性を信じます。) 一、研究室は差別資料開架(ゾーニングあり)。ゼミで差別言説を扱ったり実態を紹介する可能性あり(特に酷い資料を扱うことは稀)。 一、差別やアウティング禁止。初参加者は反差別研修参加必須(但し判断基準は人種差別撤廃条約など国際人権諸条約(違法レベルの差別)なので、それ未満の偏見等への対応は残念ながら特にマイノリティには不十分と思われます)。研究室は「放射線」(差別)を研究する「放射線管理区域」といえます(差別言説・資料を扱うだけでなく、教員が保障できる差別禁止水準がマジョリティも無視しえない最低限の違法な差別禁止でしかないということ。重要なことなので気になる方は個別で説明可)。 一、上述の指導方針の意図とその限界について。本ゼミは思考の焦点を主体から「主体を条件づける社会関係」へとズラす技法の習得を目指します。例えば、近代人(特にマイノリティ)を苛む「私は何者か?」という拷問的な問いの代わりに、「私が「私は何者か?」という問いにかくも悩まされるのはなぜか?」「どのような社会関係が私にそう問わせるのか?」と問うのです。そうして差別的な社会関係を特定して言語化=理解可能にすることで、そこから逃げたり、それを変革していく「脱出口」を探る、そういう思考の技法です(これがユニークな対差別「防護服」になればと、ひいてはユニークなエンパワーメントにつながればと願います…)。この習得にはテキストと格闘する自由時間と努力と忍耐力等が一定以上必要。またマイノリティには被差別者のセイファースペースなど別の様々なエンパワーメント空間も必要でしょう。 一、必要に応じてゼミを休んだり転ゼミする判断をするに十分な自律性を有することが入ゼミの条件です。また学生相談室やハラスメント相談室(秘密厳守)等は遠慮なくご利用ください(相談者に不利益はありません)。 一、ゼミ選抜について。指導方針と学生の希望がかなり異なったり、学生のメンタルに過度の負担がかかりそうだと思われる場合などについては面談時に教員から、予想される懸念事項や教員にできること/できないこと等をお伝えし、本当にこのゼミで良いか意志確認をします。
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