2025年度
教員名
専門領域・卒論指導可能分野
記憶の政治学、国際関係
演習題目
ゼミ紹介
記憶論(memory studies)とは聞きなれない言葉だと思いますが、これは社会的に共有されている記憶(集合的記憶と呼ばれます)の分析を通して社会の構造や事象を明らかにする学際的な学問領域です。近年、社会科学の様々な分野で記憶論を扱った研究が増えています。 記憶の研究は、紛争後社会での和解やナショナリズム研究、そして個別の政治イシューの分析など、政治学における様々なテーマで見られます。例えば、日本と韓国は、第二次世界大戦や植民地支配の過去に関して感情的に意見を対立させていますが、このような歴史認識をめぐる対立は、国家の行動や政策、アイデンティティ、国家間関係に大きな影響を及ぼします。このゼミでは、このような「記憶の政治学」を国際関係の議論へと展開し、トランスナショナリズムや外交問題、移行期正義、ポピュリズムの台頭など、国際関係における重要なテーマを記憶論の観点から分析できるようになることを目指します。 授業では、記憶論の基本的な理論や先行研究、事例を学びます。そして、文献を読み込みながら、発表とディスカッションを通じて思考能力を培っていきます。また、グループワークを通じて記憶を使った分析手法を習得し、卒業論文の執筆に向けた準備をしていきます。
卒論・卒業研究について
多くのゼミでは、「安全保障」や「開発経済」など、特定のテーマを専門的に学び理解を深めていきますが、このゼミで主眼に置いているのは国際関係を分析するためのアプローチです。そのため、このゼミでは特定の地域やテーマを限定しません。記憶や歴史認識の観点から国際関係を考える限りにおいて、卒論のテーマや事例として取り上げる地域は自由に設定することが可能です。 これまでの卒業論文のタイトルには以下があります。 「『犠牲者』に代わる新たな道徳的権威を用いたナショナリズム:杉原千畝の記憶を例に」 「戦時記憶の見直しの動きと和解:アルザス=ロレーヌの強制召集兵の記憶から」 「サイパンの観光地における戦争の記念の分析:チャモロ人のヴァナキュラーな記憶に着目して」 「習近平思想における中国歴史の再解釈とその政治的利用:現代中国における歴史的正当性の構築」 「歴史修正主義と無関心な大衆」 卒業論文では、事象の説明に終始するのではなく、先行研究を踏まえた上で自ら調査し、データを集め、分析することが求められます。また、結論だけではなく、その結論に至るロジックも重視されます。卒業論文には能動的に研究する姿勢が必要になるので、ゼミでは積極的に議論に参加するとともに、自ら考えて分析することを常に意識するようにしてください。
受講上の注意など
3年次の春学期に「歴史認識論」を履修することを必須とします。また、自分が卒論で取り組みたい地域やテーマについて、必要に応じてサブゼミを活用することを推奨します。
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