2025年度
教員名
専門領域・卒論指導可能分野
ペルシア文学、イラン文化
演習題目
ゼミ紹介
私の専門はペルシア古典文学です。「古典」と聞いただけで敬遠する人もいるでしょうが、古典というものは、人間にとって普遍的といえる表現への欲求がことばで実現され、伝統的に一定以上の評価を受けてきたもの、その価値が変わらぬものです。遥か以前より、地域の人々の間で語り継がれてきた作品であるため、脈々と受け継がれてきた人々の考え方や感じ方が最も顕著に表れた総体といえます。古典は伝統的であり、現実的でもあり、個性的であると同時に一般的でもあります。批判的・革命的要素をも含んだり、民族的性格を備えたりもしますが、何はともあれ極めて「人間的」であり、人間の教養に資するものです。私はペルシア古典文学を通して「イラン人とは何ぞや」という問いに対する答えをずっと探し続けています。古典作品は、イランもしくはイラン人を知るための手がかりとなることは勿論ですが、身近なところでは私達の日常生活における人間関係構築のヒントにもなります。また、時間を自由に使える学生の間に、ペルシア古典文学を通してじっくり思索に耽り、自身を見つめ直すのもよいでしょうし、「現代イランに受け継がれ、息づいている文化」に触れ、自らの想像力を育む機会とするのもよいでしょう。ゼミでは、14世紀頃までのペルシア文学作品の層の厚さが物語る「伝統」が、現代のイラン人の人生観・価値観形成に与える影響、それに裏打ちされた人生哲学を探ることにより、イラン人・イラン文化理解への糸口を探ります。現代イラン社会においてイラン人の思考形成の一端を担い、人間として生きていくための「教養」として息づいている数多の古典文学作品―フェルドウスィーの『王書』、アッタールの『神の書』、サアディーの抒情詩集、ルーミーの『精神的マスナヴィー』や抒情詩『シャムス・タブリーズィー詩集』、ハーフェズの抒情詩集等―とじっくり向き合うことにより、イランやイラン人への理解を深める一歩を踏み出してみませんか。 このゼミでは、ペルシア古典作品の中から、例えば、春学期には『王書』の名場面を、秋学期にはペルシア神秘主義叙事詩や抒情詩を精読します。精読するテキストは、毎年受講者と相談して決めることにしています。最初の数回は講義形式をとり、丁寧に解説していきますので、初めて詩や韻文に取り組む人でも安心して参加できます。徐々に詩の形式や読み方に慣れてきた段階から、受講生自身で読み進めてもらいます。ゼミでは、現代イランに通ずるイラン人特有の思想や精神性について、出席者全員で考察し、話し合うことを重視します。なお、受講者の興味関心や研究対象によっては、現代文学や映画作品、音楽や舞踊などの芸術や風俗習慣等を授業の素材として取り上げることもあります。
卒論・卒業研究について
これまでに提出された卒業論文を、ジャンル別に挙げてみましょう。 ペルシア・イラン文学関連では「現代イランにおける女性の文学的ディスクールの社会受容の考察」、「ペルシア文学における「英雄」の諸相」、「サアディーが説く「処世訓」―『薔薇園』より―」、「ペルシア修辞学―その体系と用例」、「ハイク研究」、イラン映画関連では「"真実探求の哲学者"アッバース・キアーロスタミー監督―"子供"と"道"の表象に見る彼の人生観―」、イラン社会における服装や風俗に関しては「イランにおける民族衣装のいま―トルキャマーンの装身具を中心に」、「象徴としてのヒジャブ」、イラン社会の事象全般についての論考には「イラン人に負けないペルシア語―イランの大学入学試験で求められる水準から見えるもの」、「イラン社会を読む―風刺新聞「ゴルアーガー」を題材に―」、「1930年代イランの小説における検閲の事例とその考察」、「イラン社会を紐解く―鼻整形を糸口とした多角的アプローチに鑑みて」などが挙げられます。 古典文学から名作を集めたハーンラリー夫人編著『ペルシアの美しい物語集』、ナーセル・ホスロー著『旅行記』、現代女性作家ゾウヤー・ピールザード著『3冊の本』の3作品の翻訳(全訳)も、卒業研究として提出されています。
受講上の注意など
ペルシア語専攻生または既習者で、佐々木担当の概論科目や専門講義を少なくとも半期受講しておくことが望ましいのですが、それ以外の場合でも相談に応じます。ペルシア語テクストを精読したい、あるいはイランの文化にどっぷりと浸ってみたい人、大歓迎です。
ページの先頭へ